変化と美
奈良市の大和文華館では、2月17日まで”新年を祝う、吉祥の美術”をやっています。おめでたい柄や、今年の干支を描いたものをどの美術館でも新年に展示したりされます。
※美術品は写真撮影できないので、チラシからとっています。
今回伺おうと思ったのは、当館学芸員の方がやってくださる、講演会”改元によせて”に参加するためです。
美術館に行く楽しみの一つとして, 美術の背景を教えてくださる講演会に参加するのはぜひとも行ってみてほしいです。知れば知るほど、とても面白くなります。
もうすぐ天皇の即位儀礼があります。今こそ、国民にとって天皇の存在を身近に感じられたことはない時代だったのではないでしょうか。平成は災害が多かった時代でした。災害の場所に慰安の旅をされる天皇の姿に心を慰められました。
そんな天皇と歴史でそれぞれの時代の天皇はかなり隔たりがあります。天皇の姿は歴史で習う天皇とは違い、時代とともに変化していきました。変化していったからこそ、永代長く天皇が日本の象徴として存在しえたのかもしれませんね。
今回のアートはそれでも行われ続けた即位式を儀式次第を描いた絵としたものです。それを後世に伝える大切な資料としても存在しています。
今回の展示ではその式次第はないのですが、講演会ではそれをスライドでたくさん見せてもらいました。(スライドは撮影できないので、おみせできなくて残念)
今回、いくつかオドロキがありました!
①古式ゆかしき儀式は、明治以前はなんと唐風(中国風)
②即位式は行っても、大嘗祭は行わないこともあった(それも221年間も!)
それではひとつずつ見ていきましょう。
①唐風の即位式
行事を行う人の服装が唐の服装であったようで、明治になるころ、「日本の大切な行事を中国の服装でやるのはけしからん」ということで、明治にこの度みられるような平安時代の服装となったようです。どんな服装だったのかは特に美術品として展示されていないそう。東京博物館に多数所蔵があるそうです。今年公開される?
カンタンにいうと、即位は天皇として立ったことを示す式、大嘗祭は即位をお祝いするための儀式です。
大嘗祭が九代にわたり221年もの長い間、行われなかった大きな理由は宮中の事情でした。この時代(室町時代から江戸)は天皇と公家の権力が失墜し、行えなくなっていました。
大嘗祭はその儀式のために2つの建物を建て、選ばれた地域によりお祝いものを神にささげて宴をする式です。莫大なお金が必要でした。
今回大嘗祭を国費でするべきではないという、秋篠宮の発言がありました。
空海で知られる、大日如来。後三条天皇(1068年)の即位式より、大日如来の印(手の組み方)を天皇が結び、明を唱えることが儀式の次第として組み込まれることになります。これは大日如来を擬態しているものです。明治が開ける孝明天皇の御代まで行われました。神仏合体の日本らしい儀式と言えますね。
今回これに関する美術品を大和文華館で公開はされていませんが、学芸員の方のお話はとても興味深く、5月に行われる即位式をまたちょっと違った目で見れそうで楽しみです。ありがとうございました。
公開されている絵(チラシから撮影)は、おめでたい図柄。初夢を見れなかった皆様、美術館でおめでたづくしはいかが?
なお、2月16日(土)は京都博物館でも即位儀礼と美術にに関する講演がされるようです。興味がある方はぜひ!
初公開!天皇の即位図
https://www.kyohaku.go.jp/jp/project/emperor_2018.html
時代の美術の粋が集まるのはいつも権力と経済力が集まるところ。その時代によって天皇の儀式であっても、行われる方法は変わっていくんですね。
テレビで即位式、大嘗祭の儀式をご覧になる方はぜひ、高御座や御帳台の飾りに注目してみてください。
おめでたい鳳凰や龍、麒麟(想像上の動物)がそれぞれに描かれていますが、少しずつ違いがあります。天皇のものと皇后のものとで装飾の違い。またこういったおめでたい動物が沢山観られるのもそんなにない機会ですよね。
今回伺った大和文華館の次回は鉄斎特集です。この美術館の鉄斎の収集の数は多く、見どころ満載です。大胆な筆遣いの魅力に触れてみてください。
今回のように学芸員による講演会もアートに対する別の目線を開かせてくれますよ。
皆さんが、生活の中で美術に触れるのはどんなときですか?